うがい薬の殺菌効果をタンパク質による退色で調べてみました (FR-2.8)
うがい薬の殺菌効果について、タンパク質とポピドンヨード(うがい薬の成分)の反応による色の変化で調べてみました。
うがい薬の作用機序は、「水溶液中のポビドンヨード液はヨウ素を遊離し、その遊離ヨウ素(I2)が水を酸化して H2OI+が生じる。H2OI+は細菌及びウイルス表面の膜タンパク(-SH グループ、チロシン、ヒスチジン)と反応することにより、細菌及びウイルスを死滅させると推定される。」とのことです。
また、「イソジン®が茶色い理由は有効成分の ポビドンヨード にあります」によると、「ポビドンヨードが有効成分のうがい薬は「茶色」が特徴。これは、「ヨード」が水に溶けたときの⾊です。ヨードが少し溶けているときは薄い黄色になり、たくさん溶けているときは非常に濃い茶色になります。」と報告されています。
今回、タンパク質溶液にうがい薬を反応させ、うがい薬の黄色が脱色して透明に変化する様子を観察しました。また、アミノ酸組成が異なるタンパク質(卵白とゼラチン)で、色の変化の違いについても観察してみました。
実験結果の数値化方法は、「ImageJを用いた呈色反応モデルの画像解析法」、「呈色反応モデル画像の数値化をImageJのマクロで自動化」、「生成AIで作ったPythonプログラムで、数値化した画像の解析を自動化」でほぼ確立しています。
何かの役には立たないし、人から見たらどうでも良いことで自己満足の世界でありますが、個人研究として取り組んでいます。
目次
1. ヨウ素デンプン反応による呈色の吸収光
2. タンパク質(卵白)によるポピドンヨード液の退色
3. タンパク質のアミノ酸組成の違いによるポピドンヨード液の退色
1. ヨウ素デンプン反応による呈色の吸収光
ヨウ素デンプン反応は、茶色のヨウ素液(市販のうがい薬_有効成分:ポピドンヨード)にデンプンを反応させると青紫になる反応です。この反応をデジカメで撮り、その画像を数値化することでデンプンの濃度測定できることを「うがい薬でデンプンの定量測定について」で紹介しました。
下の写真(A)は、片栗粉(馬鈴薯デンプン)水溶液を加熱して溶かし、625ug/mLから2倍の希釈系列を作り、有効成分がホピドンヨードのうがい薬を100倍になるように反応させた結果です。(B)は、R-, G-, B-チャンネルの吸収光の値をグラフにした結果です。R- と G-チャンネルは、片栗粉の濃度(横軸、logスケール)に比例して吸光度の数値が上がりました。また、 B- と G-チャンネルの吸収光の値は、茶色を示す成分です。B-チャンネルは、片栗粉溶液の濃度の薄いところではほとんど変化しません。さらに、ポピドンヨード液は、100倍希釈から200倍希釈にすると茶色から黄色に変わり、G-チャンネルの吸収光の影響を受けなくなります。
このことより以下の実験では、タンパク質とポピドンヨードの反応による色の変化をB-チャンネルの吸収光の値で調べることにしました。

2. タンパク質(卵白)によるポピドンヨード液の退色
下の写真(A)は、片栗粉(馬鈴薯デンプン)溶液の2倍の希釈系列(右から左)に、上の段はコントロールとして水を、下の段は卵白(メレンゲパウダー)溶液の2倍の希釈系列(左から右)加えて、ポピドンヨード液(200倍希釈)で反応させた結果です。
卵白溶液を加えるとポピドンヨード液の黄色が薄くなる結果となり、タンパク質(卵白)と反応して退色していることがわかります。

下の写真(B)と(C)は、上の写真のヨウ素デンプン反応による濃度変化に対応したR-チャンネルの吸収光の値をグラフにしたものです。(B)はコントロールで卵白無し、(C)が卵白有りのグラフです。卵白溶液の濃度は、左から右へ薄くなります。棒グラフは、’none’ の値です。両者とも片栗粉溶液の濃度に比例して値が変化しています。卵白溶液の濃度が濃い左側の値がコントロールより低くなりポピドンヨード液の色が、タンパク質と反応している影響が若干見られました。

下の写真(D)と(E)は、上の写真のヨウ素デンプン反応による濃度変化に対応したB-チャンネルの吸収光の値をグラフにしたものです。(D)のコントロールで卵白無しでは、ポピドンヨード液の黄色によるB-チャンネルの吸収光の値が認められますが、(E)の卵白有りのグラフでは卵白溶液の濃度が濃い左側のB-チャンネルの値が低くなりました。ポピドンヨード液の色が、卵白と反応して退色しているためです。

3. タンパク質のアミノ酸組成の違いによるポピドンヨード液の退色
タンパク質のアミノ酸組成によるポピドンヨード液の反応性(退色)について調べてみました。
ゼラチンは、グリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっていて、かなり偏ったアミノ酸組成をしています。
ヨウ素と反応するタンパク質(-SH グループ、チロシン、ヒスチジン)のアミノ酸組成は、卵白とゼラチンで下の写真(C)の様になります(食品データーベース)。このアミノ酸組成から、卵白の方がゼラチンよりポピドンヨード液との反応性が良いことが予想されます。
下の写真(A)は、卵白溶液とゼラチン溶液の濃度を0〜1,000ug/mLで変化させ、ポピドンヨード液を反応させた結果です。卵白は、濃度に比例してポピドンヨード液の退色する反応がゼラチンに比べ早いことが分かります。(A)の結果のB-チャンネルの吸収光の値をグラフにしたのが(B)です。

下の写真(D)は、卵白溶液とゼラチン溶液の濃度を狭め 0〜450ug/mL で変化させ、ポピドンヨード液を反応させた結果です。
(D)の結果のB-チャンネルの吸収光の値をグラフにし、上の写真(B)と合わせたのが(E)です。タンパク質濃度が 0〜250ug/mLの範囲で B-チャンネルの値に直線性が見られました。その一時回帰式を求めたのが(E)です。
卵白溶液は、y = -0.32631x + 150.13 (R2 = 0.90808) で、ゼラチン溶液は、y = -0.2163x + 152.98 (R2 = 0.9954) という結果になりました。

ポピドンヨード液が反応するタンパク質のアミノ酸の割合によって回帰直線の傾きが異なることが示されました。この傾きが、アミノ酸組成とどのように関連しているかは、今のところ分かりません。






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