紫芋パウダーを使って酸性・アルカリ性の色変化を調べる〜自宅でできる簡単な研究(FR-3.3)

 酸性やアルカリ性で色が変化する身近な食品は、紫キャベツやナスがよく知られています。これは、食品に含まれるアントシアニンが酸やアルカリに反応するからです。
 ナス、紫キャベツ、ぶどう(巨峰)についての実験は、「ナスの色素(ナスニン)の酸性とアルカリ性による色の変化について」「紫キャベツと巨峰を使った酸性とアルカリ性による色の変化について」で紹介しております。
 これらの食品は、季節によって入手困難なものもあります。ここでは、お菓子やパンの色づけに使われている紫芋パウダーを使って、酸性やアルカリ性溶液による色の変化を調べてみました。アントシアニンを水で抽出した溶液の実験のほか、パウダーを直接振りかける方法も検討してみました。

考え方と目次

何かの役には立たないし、人から見たらどうでも良いことで自己満足の世界でありますが、個人研究に取り組んでいます。

目次
 1 紫芋パウダーから紫色素(アントシアニン)の溶液を抽出する
  1-1 紫芋パウダーからの指示薬の抽出
  1-2. 抽出液の酸・アルカリによる色の変化
 2 紫芋パウダーを振りかける
  2-1 計量スプーン
  2-2 直接紫芋パウダーを使った時の酸・アルカリによる色の変化
 3 紫芋パウダーの希釈
  3-1 片栗粉を使った紫芋パウダーの希釈
  3-2 希釈した紫芋パウダーでの酸・アルカリによる色の変化
 4 アンモニア水について

1 紫芋パウダーから紫色素(アントシアニン)の溶液を抽出する
 1-1 紫芋パウダーからの指示薬の抽出
 紫芋パウダーは「紫いもの粉」など、手軽に購入できます(下の写真)。実験するには、多いくらいで残りはお菓子作りなどの使いましょう。

 アントシアニンを含んだ紫色素溶液は、紫芋パウダー2gを20mLの水に入れて紫色素を抽出しました。その後、濾紙で漉して指示薬としました(下の写真左から右)。溶液がドロドロで濾過に時間かかりました。

 まず、製氷皿を使い1mL の酸性からアルカリ性の溶液に、紫芋パウダー指示薬を50uL 入れました(下の写真左上)。
 反応させた溶液を200uL取り、マイクロプレートに入れたのが下の写真の左下になります。
 マイクロプレートのデーターをImageJで解析し(「ImageJを用いた呈色反応モデル(食紅)のデジタル画像解析法」)、R, G, B-チャンネルに分け数値化しました。
 グラフは、透過光(反射光)の値を示しています。透過光と吸収光のについては、「2種類の食紅水溶液を混ぜた時の色を予測してみました」で説明しています。酸性では、R-チャンネル(赤色)の透過光の値が高く、アルカリ性でG-チャンネル(緑色)がR-チャンネル(赤色)とB-チャンネル(青色)を逆転しB-チャンネルが減少する結果となりました(下の写真左)。

 色を濃くするため、製氷皿に紫芋パウダー指示薬を50uL(トータル100uL)追加しました(下の写真)。
 紫パウダー指示薬が50uLの時より色が濃くなり色の変化が見やすくなりました。左のグラフでは、色が濃くなったため酸性ではG-チャンネルとB-チャンネルの値が紫パウダー溶液が50uLの時より値が低くなっています(R, G, Bの値がそれぞれ255の時、白色となる)。

 使用した酸性・アルカリ性溶液は、

酸性・アルカリ性溶液

1: サンポール x20 (5%):一般情報によるpH
2: 0.1M クエン酸:一般情報によるpH
3: クエン酸-クエン酸ナトリウム (pH 3.0):pH試験紙によるpH
4: Standard pH 4.00
5: クエン酸-クエン酸ナトリウム (pH 5.5):pH試験紙によるpH
6: クエン酸-クエン酸ナトリウム (pH 6.0):pH試験紙によるpH
7: Standard pH 6.86
8: 0.1M 重曹:一般情報によるpH
9: Standard pH 9.18
10: 0.1M セスキ炭酸ナトリウム:一般情報によるpH
11: 0.2% アンモニア水:一般情報によるpH
12: 1% アンモニア水:一般情報によるpH

 番号の 4, 7, 9 は、pH 4, 7, 9 標準液を使用しました。
 番号の 1, 2, 8, 10, 11, 12 は、一般的に言われている溶液のpHの値をそのまま使いました。
 番号の 3, 5, 6 は、クエン酸バッファー調整法を参考に、pH試験紙を使用して調整しました。参照

2 紫芋パウダーを振りかける
 酸性やアルカリ性の試料に水などで抽出した溶液を加え色の変化を見る場合、加える溶液の量が多いと調べたい試料が希釈される影響が懸念されます。
 そこで、紫芋パウダーを直接加える方法を検討しました。

 2-1 計量スプーン
 試料を1mLに紫芋パウダーを加えることを想定すると、可能な限り少量が量れるスプーンを探しました。食紅に付属しているスプーンは、すりきり1杯で食紅が約0.1gと説明されていました(下の写真上の左)。また、市販品の計量スプーン(下の写真上の中と右)は、1/64 ティースプーン[小さじ] と同等であることが紫芋パウダーを使ってわかりました(下の写真の下)。このサイズの計量スプーンを使用することにしました。

 2-2 直接紫芋パウダーを使った時の酸・アルカリによる色の変化
 紫芋パウダーを上記計量スプーンで1杯量り、製氷皿に入った試料1mL に加えました(下の写真上の左)。少し時間を置いた後、製氷皿の溶液の上澄みを200uL取りマイクロプレートに分注しました(下の写真下の左)。その数値データーをグラフにしたのが下の写真の右です。少し色が濃すぎる結果になりました。そこで、紫芋パウダーを希釈することにしました。

3 紫芋パウダーの希釈
 3-1 片栗粉を使った紫芋パウダーの希釈
 紫芋パウダーの希釈は、片栗粉を使って検討してみました。紫芋パウダー1に対して片栗粉4の割合(5倍希釈)で混ぜ、計量スプーンを使って1杯づつ製氷皿に入れました(下の写真)。

 3-2 希釈した紫芋パウダーでの酸・アルカリによる色の変化
 製氷皿に入った5倍希釈の紫芋パウダーに酸性やアルカリ性の試料1mL を加えました(下の写真左)。少し時間を置いてアントシアニンが溶け出て来た後、製氷皿の溶液の上澄みを200uL取りマイクロプレートに分注しました(下の写の左)。中性(番号7)で綺麗な紫色になりました。

4 アンモニア水について
 購入したアンモニア水は10%アンモニア溶液で、この溶液の2%(最終的に0.2%)、10%(最終的に1%)を試料として使いました。0.1M セスキ炭酸ナトリウムより強いアルカリ性溶液は、0.2%, 1%ではなく2%, 10%が正しいみたいです。
 下の写真は、pH9.18の標準液(std ph 9.18)とアンモニア水 0.2, 1, 2.10%と5倍希釈の紫芋パウダーを反応させました。アルカリ性が強い10%アンモニア水では、黄色く変化しているのがわかりました。

 pH試験紙による測定は、アンモニアの揮発が激しくすぐに色が変化するためpHの測定は困難でした。