ヨーグルトのホエイタンパク質の量を赤色105号(ローズベンガル)で測定〜自宅でできる簡単な研究(FR-2.4)

 タンパク質の定量法の1つであるBradford法は、個人研究の環境では試薬が入手が困難です。代わりに食紅の赤色105号(ローズベンガル)を使うことでタンパク質(ゼラチン)の定量が可能であることを「食紅を使ったタンパク質の定量法(Bradford法の様に)」で示しました。
 今回は、タンパク質として「メレンゲパウダー」を使い「ゼラチン」と同様の結果が出るかを調べてみました。また、卵白(メレンゲパウダー)の検量線を使い、ヨーグルトの「乳清(ホエイ)」のタンパク質の量を調べてしてみました。
 試料の成分を呈色反応でデジタル画像から数値化する方法は、「ImageJを用いた呈色反応モデルの画像解析法」、「呈色反応モデル画像の数値化をImageJのマクロで自動化」、「生成AIで作ったPythonプログラムで、数値化した画像の解析を自動化」でほぼ確立しています。

考え方と目次

 何かの役には立たないし、人から見たらどうでも良いことで自己満足の世界でありますが、個人研究として取り組んでいます。

目次
 1. ゼラチンおよび卵白とローズベンガルの反応について
 2. 卵白(メレンゲパウダー)を用いたの検量線の作成
 3. ヨーグルト乳清(ホエイ)のタンパク質の量を測定

 「食紅を使ったタンパク質の定量法(Bradford法の様に)」では、タンパク質として純度が高く、個人研究でも容易に入手出来、ゼリー作りなどにも使われる「ゼラチンパウダー」を用いて実験をしました。その結果として食紅の赤色105号(ローズベンガル)は、ゼラチン(タンパク質)と反応してクエン酸による退色を免れます。また、炭水化物(デンプン)ではこの現象は、起こりませんでした。この現象を利用してBradford法のようにタンパク質の定量が可能である事を掲載しました。
 この時使用したゼラチンは、アミノ酸組成および配列が他のタンパク質と比較して非常に特異的です。グリシンが全体の約3分の1を占め、アミノ酸配列では3個に1個の繰り返しとなっています(新田ゼラチン ゼラチン研究室 )。
 また、加熱溶解する必要があることと、高濃度では常温で固まりタンパク質定量の実験をするには扱いづらい面があります。
 今回、タンパク質の純度が比較的高く、お菓子作りに使用することから容易に入手出来る「乾燥卵白(メレンゲパウダー)」を用いてタンパク質定量の実験をしてみました。
 この乾燥卵白は、100g当たり86.5gがタンパク質という組成で、アルブミンが主成分ですので標準的なタンパク質だと思います。

1. ゼラチンおよび卵白とローズベンガルの反応について
 最初に、ゼラチンと卵白におけるローズベンガルの反応を調べてみました。
 ゼラチンと卵白を濃度2mg/mLから2倍希釈系列を作製し、濃度20ug/mLのローズベンガルを加えました。最後に、濃度5mMのクエン酸を加え反応させました(いずれも最終濃度の値)(下の写真)。

 上の写真で、上段ではゼラチンと卵白の濃度(希釈系列)によりローズベンガルの色が変化しました。
 下段の図は、この結果をグラフにしました(縦軸は、G-チャンネルの吸収光の値、横軸は、logスケールです)。グラフの作成方法は、「ImageJを用いた呈色反応モデルの画像解析法」を用いました。
 結果は、ゼラチンと卵白でローズベンガルとの反応に大きな差はありませんでした。
 上の写真下段の左からゼラチン(黄)と卵白(赤)の濃度に対するG-チャンネルの吸収光の値、真ん中は、ゼラチンで右が卵白のトレンドライン(近似曲線)です。両者とも10ug/mL〜100ug/mLと100ug/mL〜1,000ug/mLの濃度範囲で異なる直線が得られました。

2 卵白(メレンゲパウダー)を用いたの検量線の作成
 卵白を標準タンパク質とした時の検量線を作成してみました。2倍の希釈系列では、濃度の間隔が広くなるので、卵白の最終濃度を10ug/mL〜100ug/mL、100u/mL〜1mg/mL、1mg/mL〜2mg/mLの範囲で小刻みに濃度を変えて、ローズベンガル(20ug/mL)と反応させ、5mMのクエン酸で未反応のローズベンガルを退色させました。その結果が下の写真です。

 上の写真の結果を解析し、縦軸にG-チャンネルの吸収光の値を、横軸に卵白の濃度をプロットしたのが下の写真です。

 写真の左は、卵白の最終濃度を10ug/mL〜100ug/mL、100u/mL〜1mg/mL、1mg/mL〜2mg/mL値を1つの図にまとめました。直線性が高い卵白の濃度が10ug/mL〜100ug/mL(中)と100ug/mL〜1,000ug/mL(左)の図から、トレンドライン解析により1次方程式の検量線が得られました。

3 ヨーグルト乳清(ホエイ)のタンパク質の量を測定
 卵白で得られた検量線を使い、ヨーグルトの乳清タンパク質の定量をしてみました。
 ヨーグルトは、牛乳から国の名前のあるヨーグルトをタネとしてヨーグルトメーカで作った自家製です。
 自家製ヨーグルトを濾紙を用いて冷蔵庫で一晩濾過して得られた乳清を用いました(下の写真 (A))。乳清は、乳酸発酵食品ですので酸性の状態です。
 ローズベンガルとタンパク質の反応は、酸性溶液中では反応が若干低くなることを「赤色105号とタンパク質の吸着についての検討」に掲載しました。
 その影響を考慮して、まず乳清のpHをブロモチモールブルー(BTB、変色域 pH6.0 ~ 7.6)指示薬を用いて調べ、重曹による中和の条件を調べました。写真(B)の左は、pH標準液(pH4.00, 6.86, 9.18)とBTPを反応させた時の結果でpH7(6.86)の緑色になる条件を調べました。写真(B)の右がその結果で、乳清の4倍希釈に対して重曹溶液25mM(最終濃度)で中性になりました。
 写真(B)の下に、乳清を中和なし(そのまま)時と重曹で中和した時で、ローズベンガル(20ug/mL)と反応させ、5mMのクエン酸で未反応のローズベンガルを脱色させた時の結果です。
 中和をしないと乳清の濃度が高いところで、酸性の影響によりローズベンガルとの反応性が落ちる結果となりました。

 中和なしと重曹による中和、それぞれをG-チャンネルの吸収光の値(Y軸)と乳清の希釈倍率の逆数(X軸)でプロットしたのが上の写真の(C)左です。希釈倍率16から64で直線が得られましたので、それぞれのタンパク質濃度を卵白の検量線(10ug/mL〜100ug/mL)で得られた式「y=1.0052x+35.381」から求めました。
 平均したタンパク質濃度の値は、中和なしで 1.8mg/mL、重曹で中和した時で2.0mg/mLという結果となりました。
 また、卵白の検量線(0.1mg/mL〜1mg/mL)で得られた式「y=0.0369x+129.74」から重曹で中和した乳清のタンパク質量は、3.8mg/mLとなりました。
 検量線に使用した卵白は、100g当たり86.5gがタンパク質という組成ですので、2mg/mLx0.865=1.7mg/mL(10〜100ug/mL検量線、重曹中和)が最終的な結果です。
 0.1mg/mL〜1mg/mL検量線を用いた重曹中和では、3.8mg/mLx0.865=3.3mg/mLとなりました。
 meiji(科学で検証!ヨーグルトと料理のおいしいカンケイ)によると、100gあたりのホエータンパク質の量は0.4gとのことですから、約4mg/mLが正解のようです。
 今回の実験の結果は、大きくは外れていないが正確性は・・・という感想です。もう少し検討の余地がありそうです。相対的にタンパク質の量の違いを比較する事は出来そうです。