コーヒーのペーパーフィルターの違いを食紅で調べてみました〜自宅でできる簡単な研究(FR-4.3)

 レギュラーコーヒ-を入れるペーパーフルターには、大きく分けてホワイト(漂白)とブラウン(無漂白)があります。入れたコーヒーの味に違いがあるかどうかは、私の味覚では分かりませんが、食紅を使ってペーパークロマトグラフィーをするとホワイト(漂白)とブラウン(無漂白)で異なる結果が出ました。
 ここでは、従来のペーパークロマトグラフィーの様に試料の性質を調べるのではなく、担体(ペーパーフィルター)の性質を調べるために、食紅を使った実験を紹介します。

考え方と目次

考え方
 何かの役には立たないし、人から見たらどうでも良いことで自己満足の世界でありますが、個人研究として取り組んでいます。

目次
 1. 濾紙によるペーパークロマトグラフィー
 2. ペーパーフィルターの種類
 3. ペーパーフィルターによるペーパークロマトグラフィー
 4 .食紅を2色を混合した時のペーパークロマトグラフィー
 5. 無漂白のペーパーフィルターを漂白した結果
 6. まとめ

 自宅でできる個人研究として、タンパク質やデンプンなどの試料を定量する方法は、「ヨーグルトのホエイタンパク質の量を赤色105号(ローズベンガル)で測定」や「うがい薬でデンプンの定量測定について」でほぼ出来る様になりました。
 今回、試料の性質を調べる(定性)方法として個人研究でも可能な「ペーパークロマトグラフィー」について検討してみました。

1. 濾紙によるペーパークロマトグラフィー
 ペーパークロマトグラフィーの簡単な実験として、サインペンを使って色が分かれる現象がよく紹介されています(産総研 サイエンスタウン)。
 ろ紙に吸着しにくくて展開液への溶解度が大きい試料は、移動が速くなり原点からの移動距離が大きくなります。逆に、ろ紙に吸着しやすくて展開液への溶解度が小さい試料は、移動が遅くなり原点からの移動距離が小さくなります。この現象を利用して試料の性質を調べる事が出来ます。
 濾紙(担体)を1cmx10cmの短冊状にし、2cmの所(原点)に食紅の「緑」(下の写真左下)の5倍希釈溶液を約10uLスポットし、水で展開したのが下の写真右です。

 実験方法は、上の写真の中央の様にペットボトルと割り箸を使い行いました。食紅の濃度は、付属の1さじ(0.5g)を水 1mLで溶解したものを原液としました。
 食紅の「緑」の成分は、デキストリン_88.0%, 黄色4号_8.4%, 青色1号_3.6% となっています。ペーパークロマトグラフィーの結果は、「青色1号」の移動距離が「黄色4号」の移動距離より大きく2色に分離されました。

2. ペーパーフィルターの種類
 ペーパーフィルターにはブラウン(無漂白)とホワイト(漂白済み)の2種類があります。
 それぞれ、
  ・ブラウンのペーパーフィルターは、パルプの香りや色が溶け出しコーヒーに影響を与える
  ・ホワイトのペーパーフィルターは、「漂白されている」ことによる健康への影響を与える
 といった可能性をが考えられ、それらを考慮してペーパーフィルター選んでいる人が多くいます。
 ペーパーフィルターの詳しい解説は、「あなたの好みは?コーヒー機器メーカーのペーパーフィルターまとめ」にあります。
 今回使用したペーパーフィルターは、「メリタエコブラウン」「カリタホワイト」「カリタブラウン」の2-4杯用の物を使用しました(下の写真左と中央)。ペーパーフィルターを下の写真右の様にすると、1cmx10cmの短冊状のものが、12個作れます。

3. ペーパーフィルターによるペーパークロマトグラフィー
 ペーパークロマトグラフィーの担体は、(A)濾紙、(B)メリタエコブラウン、(C)カリタホワイト、(D)カリタブラウンをそれぞれ使用しました。
 試料は、(a)赤色102号、(b)青色1号、(c)黄色4号を5倍希釈した溶液を使用しました。
 試料約10uLをそれぞれの担体にスポットし、水で展開した結果が下の写真です。

 「メリタエコブラウン」と「カリタブラウン」を担体としたペーパークロマトグラフィーで「青色1号」の移動度が「赤色1号」と「黄色4号」に比べ小さくなっている結果となりました。
 「濾紙」と「カリタホワイト」では、逆に「青色1号」の移動度が「赤色1号」と「黄色4号」に比べ若干大きくなっている結果となりました。
 写真下の数値は、スポットした位置から試料が移動した距離と展開液が移動した距離の比率(Rf値)を示しています。

4. 2色を混合した時のペーパークロマトグラフィー
 上の実験で、「青色1号」が担体(コーヒフィルター)によって異なる移動度を示している結果が得られました。
 そこで「青色1号」と「赤色1号」または「黄色4号」を混ぜてペーパークロマトグラフィーすることで食紅間の移動度の違いを比較しました。
 ペーパークロマトグラフィーの担体は、(A)濾紙、(B)メリタエコブラウン、(C)カリタホワイト、(D)カリタブラウンをそれぞれ使用しました。
 試料は、(a)赤色102号と青色1号を等量混合、(b)黄色4号と青色1号を等量混合して希釈倍率を5倍とした溶液を使用しました。
 試料約10uLをそれぞれの単体のスポットし、水で展開した結果が下の写真です。

 「青色1号」は、「赤色1号」または「黄色4号」に対して無漂白のペーパーフィルター「メリタエコブラウン」と「カリタブラウン」では、移動度が低く、漂白のペーパーフィルター「カリタホワイト」と濾紙では、逆の結果となりました。

5. 無漂白のペーパーフィルターを漂白した結果
 無漂白のペーパーフィルター「メリタエコブラウン」をキッチンハイターで漂白して2色を混合した食紅でペーパークロマトグラフィーをしてみました。漂白方法は、10倍に希釈したキッチンハイターにペーパーフィルターを1時間ほど浸け、水で洗浄した後に乾かしました。
 下の写真(A)がその結果です。漂白したものは、「カリタホワイト」や濾紙の結果に近づきました。
さらに、新聞紙(下の写真(B))と「メリタナチュラルブラウン」(下の写真(C))についてペーパークロマトグラフィーしてみました。

6. まとめ
 食紅を試料とし、担体を濾紙で実験したペーパークロマトグラフィーの結果は、「青色1号」の移動度が「赤色102号」と「黄色4号」より大きくなりました。
 この結果を基準にすると

・無漂白の「メリタエコブラウン」と「カリタブラウン」は、「青色1号」の移動度が「赤色102号」と「黄色4号」の移動度と逆転する
・漂白済みの「カリタホワイト」は、移動度に若干の差はあるが濾紙と同じ様な結果になる
・「メリタエコブラウン」を塩素系漂白剤で処理すると、濾紙の結果に近づく
 これは、漂白剤によって「青色1号」と相互作用する物質が除去されたためと考えています
・「青色1号」と相互作用する物質は、新聞紙にも含まれる

 ペーパーフィルターによって、この現象を引き起こす物質の有無が、コーヒの味に影響するかどうかは分かりません。
 従来のペーパークロマトグラフィーの様に試料の性質を調べるのではなく、担体(ペーパーフィルター)の性質を調べるために、食紅を使った実験を紹介しました。