小麦粉の水溶性タンパク質の量を赤色105号(ローズベンガル)で測定してみました〜自宅でできる簡単な研究(FR-2.7)
 小麦粉に含まれるタンパク質の量を調べてみました。タンパク質の定量法のBradford法は、個人研究の環境では試薬が入手が困難です。代わりに食紅の赤色105号(ローズベンガル)を使うことでタンパク質の定量が可能であることを「食紅を使ったタンパク質の定量法(Bradford法の様に)」で示しました。
 今回は、小麦粉(強力小麦粉と薄力小麦粉)に含まれるタンパク質として精製水に溶けるタンパク質(アルブミン)の量と、食塩水に溶けるタンパク質(アルブミンとグロブリン)の量を調べてみました。
 試料の成分を呈色反応でデジタル画像から数値化する方法は、「ImageJを用いた呈色反応モデルの画像解析法」、「呈色反応モデル画像の数値化をImageJのマクロで自動化」、「生成AIで作ったPythonプログラムで、数値化した画像の解析を自動化」でほぼ確立しています。
何かの役には立たないし、人から見たらどうでも良いことで自己満足の世界でありますが、個人研究として取り組んでいます。
目次
 1. 材料:乾燥卵白(メレンゲパウダー)と小麦粉
 2. メレンゲパウダー(乾燥卵白)溶液を用いたタンパク質濃度の検量線
 3. 精製水に溶ける小麦粉タンパク質量の測定
  3-1 精製水での卵白の検量線
  3-2 精製水に溶ける強力小麦粉と薄力小麦粉のタンパク質量の測定
 4. 食塩水に溶ける小麦粉タンパク質量の測定
  4-1 食塩水での卵白の検量線
  4-2 食塩水に溶ける強力小麦粉と薄力小麦粉のタンパク質量の測定
1. 材料:乾燥卵白(メレンゲパウダー)と小麦粉
 今回使用する材料は、タンパク質の検量線に用いる乾燥卵白(メレンゲパウダー)と測定対象として強力小麦粉と薄力小麦粉を使用しました(下の写真)。
 乾燥卵白は、100g当たり86.5gがタンパク質という組成で、アルブミンが主成分です。強力小麦粉と薄力粉麦粉は、日清製粉ウェルナの製品でそれぞれ100gあたりのタンパク質量が12.6gと8.8gです。

2. 卵白(メレンゲパウダー)を用いたタンパク質濃度の検量線
 卵白を標準タンパク質とした時の検量線を作成してみました。卵白の最終濃度を10ug/mL〜100ug/mL、100u/mL〜1mg/mLの範囲で濃度を変えて、ローズベンガル(20ug/mL)と反応させ、5mMのクエン酸で未反応のローズベンガルを脱色させました。その結果が下の写真です。
 写真の下の段の結果を解析し、縦軸にG-チャンネルの吸収光の値を、横軸に卵白の濃度をプロットしたのが上の段のグラフです。

 グラフの左は、卵白の最終濃度を10ug/mL〜100ug/mLの範囲で測定した結果で、右は、100ug/mL〜1mg/mLの範囲で測定した結果です。トレンドライン解析により1次方程式の検量線が得られました。
 今回、G-チャンネルの吸収光の値を広範囲に使える卵白の最終濃度が10ug/mL〜100ug/mLの範囲の検量線を使って解析しました。
3. 精製水に溶ける小麦粉タンパク質量の測定
 下の表「溶解性による植物タンパク質の分類」から、小麦粉に含まれるタンパク質で水溶液に溶けるものは、アルブミンとグロブリンです(溶解性による植物タンパク質の分類(Osborne、1924)グルテンについて)。
| タンパク質の種類 | 小麦タンパクに含まれる割合 | 分画方法 | 
|---|---|---|
| アルブミン | 15% | 水溶性 | 
| グロブリン | 3% | 水には溶けないが中性塩溶液に溶ける。 | 
| プロラミン | 33% | 水、中性塩溶液には溶けないが、50%程度のアルコール溶液に溶ける。 | 
| グルテリン | 16% | 水、中性塩溶液、アルコールには溶けないが、薄い酸、塩基に溶ける。 | 
| 残渣タンパク質 | 33% | 上記のどれにも溶けない | 
3-1 精製水での卵白の検量線
 精製水に溶ける小麦粉に含まれるタンパク質(アルブミン)の量を測定するため、検量線を作成しました。
 下の写真は、卵白の最終濃度が10ug/mL〜120ug/mLの範囲の検量線です。上の段の結果をグラフにしたのが下の段の左です。トレンドライン解析により1次方程式の「y=0.9454x+66.835」が得られました。
 右の表は、左の列から卵白の濃度、卵白に含まれるタンパク質の濃度、得られた一次方程式による検算(xの値は、G-chの吸光度の値)、G-チャンネルの吸光度の値です。

検算の結果からG-chの値が85-150でタンパク質の濃度の値と良く一致していました(水色)。この範囲の値を小麦粉のタンパク質量測定使用することにしました。
3-2 精製水に溶ける強力小麦粉と薄力小麦粉のタンパク質量の測定
 精製水に溶ける強力小麦粉と薄力小麦粉のタンパク質量を測定してみました。小麦粉1gを10mLの精製水に溶かし、遠心により上清を別容器に移し100mg/mLの試料としました。
 下の写真の上の段は、2倍希釈系列の小麦粉溶液をローズベンガル(20ug/mL)と反応させ、5mMのクエン酸で未反応のローズベンガルを脱色させた時の結果です。
 G-チャンネルの吸収光の値(Y軸)と小麦粉の希釈倍率の逆数(X軸)でプロットしたのが下の段のグラフで右が強力粉麦粉で、真ん中が薄力小麦粉の結果です。
 精製水での卵白のトレンドライン解析により得られた1次方程式の「y=0.9454x+66.835」を使用し、小麦粉のタンパク質濃度を計算したのが右の表になります。
 左の列から小麦粉の希釈倍率、強力粉のG-チャンネルの吸光度の値、計算より得られたタンパク質濃度、薄力粉のG-チャンネルの吸光度の値、計算より得られたタンパク質濃度です。

 小麦粉のG-chの値が85-150範囲で得られたタンパク質量濃度(水色)の平均値の値は、強力小麦粉が1.28mg/mLで、薄力粉麦が1.24mg/mLとなりました。
 この実験は、4回ほど行いました。その平均は、強力小麦粉 が1.56mg/mLで、薄力小麦粉が1.34mg/mLでした。
 「溶解性による植物タンパク質の分類」の表から、小麦粉溶液のアルブミンの濃度を検討した結果と比較しました。小麦粉溶液は、1gを10mL精製水で溶解したので100mg/mLで、強力小麦粉は、100gにタンパク質12.6g含まれるので12.6mg/mLとなります。その15% がアルブミンとすると1.89mg/mLの濃度になります。薄力粉は、100gにタンパク質8.8g含まれるので8.8mg/mLとなります。その15% がアルブミンとすると1.32mg/mLの濃度になります。
 実験結果は、若干低い値を示しました。
4. 食塩水に溶ける小麦粉タンパク質量の測定
 小麦粉に含まれるタンパク質でアルブミンとグロブリンは、中性塩溶液に溶けます。中性塩溶液として1Mの食塩水に溶ける小麦粉タンパク質の量を測定してみました。
4-1 食塩水での卵白の検量線
 食塩水に溶ける小麦粉に含まれるタンパク質(アルブミンとグロブリン)の量を測定するため、食塩水(125mM、1Mの8倍希釈)での検量線を作成しました。
 下の写真は、食塩水(125mM)で希釈した卵白の最終濃度が10ug/mL〜120ug/mLの範囲の検量線です。上の段の結果をグラフにしたのが下の段の左です。トレンドライン解析により1次方程式の「y=0.7432x+61.345」が得られました。
 右の表は、左の列から卵白の濃度、卵白に含まれるタンパク質の濃度、得られた一次方程式による検算(xの値は、G-chの吸光度の値)、G-チャンネルの吸光度の値です。

検算の結果からG-chの値が70-130でタンパク質の濃度の値と良く一致していました(水色)。この範囲の値を小麦粉のタンパク質量測定使用することにしました。
4-2 食塩水に溶ける強力小麦粉と薄力小麦粉のタンパク質量の測定
 食塩水(1M)に溶ける強力小麦粉と薄力小麦粉のタンパク質量を測定してみました。小麦粉1gを10mLの1M 食塩水に溶かし、遠心により上清を別容器に移し100mg/mLの試料としました。
 下の写真の上の段は、2倍希釈系列の小麦粉溶液をローズベンガル(20ug/mL)と反応させ、5mMのクエン酸で未反応のローズベンガルを脱色させた時の結果です(食塩水の最終濃度が125mMとなるように調整)。
 G-チャンネルの吸収光の値(Y軸)と小麦粉の希釈倍率の逆数(X軸)でプロットしたのが下の段のグラフで右が強力粉麦粉で、真ん中が薄力小麦粉の結果です。
 食塩水での卵白のトレンドライン解析により得られた1次方程式の「y=0.7432x+61.345」を使用し、小麦粉のタンパク質濃度を計算したのが右の表になります。
 左の列から小麦粉の希釈倍率、強力小麦粉のG-チャンネルの吸光度の値、計算より得られたタンパク質濃度、薄力小麦粉のG-チャンネルの吸光度の値、計算より得られたタンパク質濃度です。

 小麦粉のG-chの値が70-130範囲で得られたタンパク質量濃度(水色)の平均値の値は、強力小麦粉が2.22mg/mLで、薄力粉麦が2.53mg/mLとなりました。
 「溶解性による植物タンパク質の分類」の表から、小麦粉溶液のアルブミンの濃度にグロブリンの濃度を加え、検討した結果と比較しました。グロブリンは、小麦粉のタンパク質の3%とすると、強力小麦粉は0.38mg/mLの濃度で、薄力小麦粉は0.26mg/mLの濃度となります。強力小麦粉と薄力小麦粉のアルブミン濃度にグログリン濃度をそれぞれ加えると、強力粉麦が2.27mg/mLで、薄力粉麦が1.58mg/mLとなります。薄力小麦粉の値に乖離が見られました。
 この実験は、4回ほど行いその平均は、強力小麦粉 が2.79mg/mLで、薄力小麦粉が3.08mg/mLでした。
薄力粉麦粉が強力小麦粉より少ない値を示すことはありませんでした。もう少し検討する必要がありそうです。








ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません