グルテンを構成するグリアジンの簡易精製および食紅との反応について調べてみました〜自宅でできる簡単な研究(FR-2.9)

 グルテンは小麦粉に独特なタンパク質で、グリアジンとグルテニンで構成されています。グリアジンは、水または塩類溶液に溶けないタンパク質です。また、アミノ酸組成が特徴的です。今回、グリアジンの小麦粉から簡易的な精製をし、食紅の赤色105号 (ローズベンガル)との反応性について調べてみました。
 小麦粉の水または塩類溶液に溶けるタンパク質については、「小麦粉の水溶性タンパク質の量を赤色105号(ローズベンガル)で測定してみました」で、ローズベンガルとの反応を用いた定量法について報告しております。
 試料の成分を呈色反応でデジタル画像から数値化する方法は、「ImageJを用いた呈色反応モデルの画像解析法」、「呈色反応モデル画像の数値化をImageJのマクロで自動化」、「生成AIで作ったPythonプログラムで、数値化した画像の解析を自動化」でほぼ確立しています。

考え方と目次

考え方
 何かの役には立たないし、人から見たらどうでも良いことで自己満足の世界でありますが、個人研究として取り組んでいます。

目次
 1. 小麦粉タンパク質の溶解性
 2. 小麦粉からのグリアジンの簡易精製
  2-1. 湿麩からグリアジンを精製(グリアジン-1)
  2-2. 湿麩を作らずグリアジンを精製(グリアジン-2)
  2-3. グアリジン-1とローズベンガルの反応
 3. グアリジン溶液のトレンドライン解析
 4 タンパク質のアミノ酸組成の違いによる反応性

1. 小麦粉タンパク質の溶解性
 小麦粉の最大の特徴は、パンやめん類への加工に重要なグルテンというタンパク質が含まれていることです。グルテンはグリアジンとグルテニンという2種類のたんぱく質で作られます。それぞれのタンパク質の溶液に対する特徴は、グリアジンがアルコールに溶けるのに対し、グルテニンはアルコールに溶けません。
 また、グリアジンは、グルタミン(約35-40%)とプロリン(約15-20%)が非常に高い割合で含まれています。これがグルテンの粘り気や消化されにくい構造に寄与しており、セリアック病やアレルギーの免疫反応の原因物質として作用しています。

 小麦の主要なタンパク質(種類)の溶解性の違いは、下の写真の表に示すように、
  アルブミン:水・稀酸・稀アルカリおよび中性塩溶液に可溶。
  グロブリン:水には不溶。稀アルカリおよび中性塩溶液に可溶。
  プロラミン(グリアジン):含水アルコールのほか稀酸・稀アルカリには可溶だが、水・無水アルコール・中性塩溶液には不溶。
  グルテリン(グルテニン):水・中性塩類溶液およびアルコールには不溶で、稀酸・稀アルカリには可溶。
 に分けられます。

溶解性による植物タンパク質の分類」から

2. 小麦粉からのグリアジンの簡易精製
 小麦粉タンパク質の溶解性の違いを使って湿麩からグリアジンを精製する方法と、湿麩を作らずグリアジンを精製する方法を検討してみました。

2-1. 湿麩からグリアジンを精製(グリアジン-1
 うどんを作る時の様に、強力粉に対し約15%の食塩水で生地を作ってからグリアジンを生成する方法です。

湿麩からグリアジンを精製

湿麩作製
 強力粉に 15% 食塩水を加えよく練り込む
 ボールの中に水を張り、濁りがほぼ無くなるまで揉み込む (アルブミン、グロブリン、デンプ除去)
 湿麩の完成
グリアジン作製
 湿麩(重量の約2/3は水)に70% エタノール濃度になる量のエタノールを加え、さらに70% エタノール溶液を適量加える
 70% エタノール溶液で溶かした成分を濾紙で濾過する (グリアジンとグルテニンの分離)
 濾過した溶液に約20% エタノール溶液になるように水を加え、グリアジンを析出させる
 沈殿物を水で洗浄する
 20mM クエン酸溶液で溶かす

得られた物質を「グアリジン-1」としました。

2-2. 湿麩を作らずグリアジンを精製(グリアジン-2)
 強力粉に対し、多めの食塩水で溶かしてからグリアジンを生成する方法です。

湿麩を作らずグリアジンを精製

グリアジン作製
 強力粉に生理食塩水を加え、よくかき混ぜ静置する
 上清を取り、 沈殿物に水を加える
 70% エタノール濃度になる量のエタノールを加える
 濾紙で濾過する
 濾過した溶液を、ある程度乾燥させる
 20mM クエン酸溶液で溶かす

 得られた物質を「グアリジン-2」としました。

2-3. グアリジン-1とローズベンガルの反応
 2倍希釈系列のグアリジン-1溶液をローズベンガル溶液(20ug/mL)と反応させ、5mMのクエン酸溶液で未反応のローズベンガルを脱色させたのが下の写真(A)です。G-チャンネルの吸収光の値(Y軸)とグリアジン-1の希釈倍率の逆数(X軸、対数)でプロットしたのが下の段のグラフです

 卵白溶液をスタンダードにそれぞれのグアリジン溶液の希釈系列の値から濃度を求めると、グアリジン-1溶液は、22.5mg/mL、グアリジン-2溶液は、3.4mg/mLとなりました。

3. グアリジン溶液のトレンドライン解析
 得られたグリアジン溶液の濃度から、最終濃度を 0 (none)〜 90ug/mLの範囲で濃度を変えて、ローズベンガル溶液(20ug/mL)と反応させ、5mMのクエン酸溶液で未反応のローズベンガルを脱色させました。その結果が下の写真です。標準タンパク質として用いる卵白溶液と比較してみました。

 上の写真の結果を解析し、縦軸にG-チャンネルの吸収光の値を、横軸に卵白の濃度をプロットしたのが下の写真のグラフです。
 使用した乾燥卵白は、100g当たり86.5gがタンパク質という組成です。卵白溶液の x軸は、タンパク質濃度でプロットしています。

 トレンドライン解析により1次方程式の直線が卵白と同じ様に得られました。

4. タンパク質のアミノ酸組成の違いによる反応性
 タンパク質のアミノ酸組成によるローズベンガルの反応性について調べてみました。
ゼラチンは、グリシンが33%を占め、プロリン及びヒドロキシプロリンを合わせて21%、アラニンが11%と、かなり偏ったアミノ酸組成をしています。
 また、グリアジンは、グルタミン(約35-40%)とプロリン(約15-20%)が非常に高い割合で含まれています。
 ローズベンガルとの反応が予想される芳香族アミノ酸のアミノ酸組成は、卵白・グリアジン・ゼラチンで、下の表になります(食品データーベース)。

 下の写真は、濃度を0〜90ug/mLで変化させたタンパク質溶液をローズベンガルと反応させ、5mMのクエン酸溶液で未反応のローズベンガルを脱色させた結果です。

 上の写真の結果を解析し、縦軸にG-チャンネルの吸収光の値を、横軸にタンパク質の濃度をプロットしたのが下の写真のグラフです。

 使用した乾燥卵白は、100g当たり86.5gがタンパク質という組成です。また、ゼラチンパウダーは、5g当たり4.6gがタンパク質という組成です。卵白溶液およびゼラチン溶液の x軸は、タンパク質濃度でプロットしています。
 トレンドライン解析により1次方程式は、卵白が「y = 1.1955x + 55.699」、グリアジンが「y = 1.0537x + 59.737」、ゼラチンが「y = 0.8004x +61.561」となりました。
 それぞれのタンパク質の芳香族アミノ酸の割合にトレンドライン解析による1次方程式の傾きの値が反映している結果となりました。
 文献では、「酸性環境下でのローズベンガルでは、カルボキシル基がプロトン化してマイナスの電荷を失い、ヨウ素や塩素を多く持つ構造のため水に溶けにくい状態になります。この状態のローズベンガルとタンパク質の反応は、芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン)との間の疎水性相互作用によって結合します (Rose Bengal Labeled Bovine Serum Albumin for Protein Transport Imaging in Subcutaneous Tissues Using Computed Tomography and Fluorescence Microscopy. Bioconjugate Chemistry, 2024.) 」と報告されています。
 数回、同様の実験をしていますがこの傾向は変わりません。しかし、今のところ確実な結論には至っておりません。