紅大根の溶液で、酸性・アルカリ性の色変化について調べてみました〜自宅でできる簡単な研究(FR-3.4)

 紅大根は、表面だけが赤い赤カブと違い大根の中まで赤い大根で、表示ラベルによると「紅だいこん」となっています。赤い成分は、アントシアニンで目に良いそうです。以前、この紅大根を大根おろしにして新そばの薬味として食べました(紅だいこんと新そば)。
 酸性やアルカリ性で色が変化する身近な食品は、アントシアニンが含まれていて、アントシアニンが酸やアルカリに反応するからです。ナス、紫キャベツ、ぶどう(巨峰)についての実験は、「ナスの色素(ナスニン)の酸性とアルカリ性による色の変化について」「紫キャベツと巨峰を使った酸性とアルカリ性による色の変化について」で、また入手が季節に影響されない紫芋パウダーについては、「紫芋パウダーを使って酸性・アルカリ性の色変化を調べる」で紹介しております。
 今回、紅大根の赤い成分を使って酸やアルカリによる色の変化を調べてみました。

考え方と目次

 何かの役には立たないし、人から見たらどうでも良いことで自己満足の世界でありますが、個人研究に取り組んでいます。

目次
 1. 紅大根のアントシアニンを含む溶液の抽出
 2. 紅大根溶液と紫芋パウダー溶液の色合い比較
 3. 紅大根溶液の酸・アルカリによる色の変化
 4. 反応容器の色の影響を排除

1. 紅大根のアントシアニンを含む溶液の抽出
 赤大根には大きく「表皮だけ赤いもの」「果肉だけ赤いもの」「表皮も果肉も赤いもの」の3つがあるそうです(赤大根とは?赤い大根の種類と白い大根との違いなどを詳しく解説!)。
 今回使用した紅大根は、「表皮も果肉も赤いもの」になります(下の写真)。

 紅大根を大根おろし器でおろして、濾紙で濾したものを使用しました。溶液が薄い時は、濾過した溶液をビーカーなど深めの入れ物に入れ、電子レンジで突沸してこぼれない様に注意しながら加熱すれば濃縮できます。

2. 紅大根溶液と紫芋パウダー溶液の色合い比較
 今まで実験して来たアントシアニンを含む食品の抽出液は、紫色でした。紅大根溶液は、色合いが少し違う様なので紫芋パウダー溶液と色合いを比較してみました。
 紅大根溶液と紫芋パウダー溶液をそれぞれ20倍希釈した溶液をx1として、水で2倍希釈系列を作製したのが下の写真左です。反応容器は、製氷皿を使用しました。

 紅大根溶液は、紫芋パウダー溶液に比べ赤味がありました。上の写真右は、溶液の透過光(反射光)のR-, G-, B-チャンネルの値を「ImageJを用いた呈色反応モデル(食紅)のデジタル画像解析法」で紹介した方法で求め、「Pythonを使ってRGB値のデータから色画像を自動作成」で紹介した方法で作成したものです。
 下の写真は、紅大根溶液と紫芋パウダー溶液の希釈系列の透過光に対するR-, G-, B-チャンネルの値をプロットしたものです。
 後ほどやり方は述べますが、反応容器の製氷皿における透過光(バックグラウンド)を除いた値を使用しました。

 紅大根溶液は、G-チャンネルの値が低く(吸収光の値が高い)赤味が紫芋パウダー溶液より強くなっている事が分かりました。

3. 紅大根溶液の酸・アルカリによる色の変化
 製氷皿に1mLの酸性からアルカリ性の溶液を入れます。その後、それぞれのウェルに紅大根溶液を50uL入れました。10分ほど反応させた結果が下の写真上になります。下のパネルは、吸収光のR-, G-, B-チャンネルの値がら色画像を作成したものです。

 使用した酸性・アルカリ性溶液は、

 1: サンポール x20 (5%):一般情報によるpH
 2: 0.1M クエン酸:一般情報によるpH
 3: クエン酸-クエン酸ナトリウム (pH 3.0):pH試験紙によるpH
 4: Standard pH 4.00
 5: クエン酸-クエン酸ナトリウム (pH 5.5):pH試験紙によるpH
 6: 0.1M ホウ酸水溶液:pH試験紙によるpH
 7: Standard pH 6.86
 8: クエン酸-クエン酸ナトリウム (pH 8.0):pH試験紙によるpH
 9: 0.1M 重曹:一般情報によるpH
 10: 0.1M セスキ炭酸ナトリウム:一般情報によるpH
 11: 0.2% アンモニア水:一般情報によるpH
 12: 10% アンモニア水:一般情報によるpH

 番号の 4, 7 は、pH 4, 7 標準液を使用しました。
 番号の 1, 2, 9, 10, 11, 12 は、一般的に言われている溶液のpHの値をそのまま使いました。
 番号の 3, 5, 8 は、クエン酸バッファー調整法を参考に、pH試験紙を使用して調整しました。

 同様に、紫芋パウダー溶液で反応させた結果が下の写真です。

4. 反応容器の色の影響を排除
 紅大根溶液や紫芋パウダー溶液の酸性・アルカリ性による色変化のデーターは、デジカメで撮影しています。この様な色のデーターは、反応溶器である製氷皿の影響を受けることになります。
2種類の食紅水溶液を混ぜた時の色を予測してみました」で報告した「減法混色の計算方法」を使い、製氷皿の影響を無くした色を作製してみました。
 混色の計算方法は、
  (1) 透過光の値(R, G, B-チャンネル)を255から引き算して吸収光の値を得ます。
  (2) 混色する吸収光の値を足し算します(今回は、容器の値を引く)。
  (3) 255(白色光)から(2)の値を引き算します。マイナスの値は、"0″とします(吸収極大)。

 紅大根溶液の透過光をAとし、製氷皿の透過光(バックグラウンド)をBとすると
 (1)で255-A、255–Bとなり、(2)でバックグラウンドを引くと(255-A)-(255-B)となります。
 (3)で255-{(255-A)-(255-B)}でA+(255-B)となり、紅大根溶液の透過光を(A)からトレーの吸収光(255-B)を加えれば製氷皿のバックグラウンドを除いた紅大根の透過光のR, G, Bの値が得られます(255以上の値は、"255″とします)。

 下の写真のがその結果です。下のグラフは、透過光に対するR-, G-, B-チャンネルの値をプロットしたものです。

 紅大根溶液は、酸性で紫芋パウダー溶液よりB-チャンネルの透過光の値が低く(吸収光の値が高い)なっていました。
 この実験全体で、アルカリ性による色変化は反応時間によって色が変化して安定しませんでした。今回は、10分位反応させた時の色変化が良い条件でした。
 紅大根の溶液は、pH試験紙で中性でした。紅大根をおろした時の色は、酸性だからではなく大根の白色が混ざっているためと考えています。濾紙で濾した紅大根溶液は、pH7の時の様に赤紫色です。