ナスの色素(ナスニン)の酸性とアルカリ性による色の変化について〜自宅でできる簡単な研究(FR-3.1)

2024-02-16

 身近な食品には、酸性やアルカリ性のものを加えると色が変化するものがあります。例えば、紅茶にレモンを入れると紅茶の色が薄くなるなどです。旬の季節はありますが、季節を問わず手に入るナスの紫色の色素でも酸性・アルカリ性で色が変化するという報告があります(ナスを用いたpH指示薬の教材研究 )。そこで、個人研究の題材として試すことにしました。

考え方と目次

 何かの役には立たないし、人から見たらどうでも良いことで自己満足の世界でありますが、個人研究に取り組んでいます。

目次
 1. ナスの栽培
 2. ナスの色素の抽出
 3. 酸、アルカリ溶液による色の変化の実験
 4. ナスニンの褐色成分について

1. ナスの栽培
 5月の初旬にホームセンターでナス苗を買ってきました。病気に強いと言われている接木苗を毎年購入しております。去年は、台木の方からも枝が出てましたが、今年はそうならないように願います。

 ナスの苗は順調に成長し、花が咲き6月の中旬には実が生るようになりました。

 ナスは食用の楽しみの他に、ナスの紫の色素を使って酸性・アルカリ性による色の変化を利用した、pH指示薬の可能性について検討してみました。

2. ナスの色素の抽出
 アントシアニンは、酸性の時には赤色に、アルカリ性の時には青色になる性質が知られています。
アントシアニンが豊富に含まれている食品は、ブルーベリー、ぶどう、紫いも、赤たまねぎ、紫キャベツ、赤シソなどです。これらの食品は、季節によって手に入る時期が決まっていたり、常時手に入ることが難しいなどが実験する上で問題でした。
 そこで、年間を通して簡単に手に入るナスを用いてその色素がpH指示薬になるかどうかを検討してみました。
ちなみにナスには、アントシアニン系のナスニンが多く含まれているそうです(ナスを用いたpH指示薬の教材研究 )。このナスニンを発見したのは、日本人の女性化学者・黒田チカ博士だそうです。

3. 酸、アルカリ溶液による色の変化の実験
 ナスの皮の色素を水で抽出して、酸・アルカリによる色の変化を調べてみました。
食用時にピーラーで剥いたナスの皮を乾燥させました。乾燥させたナスの皮をジッパー付きのビニール袋に入れ水を加えてよく揉むと水は、紫色のになりました(写真下左)。このナスの皮からの抽出液を濾紙で濾過しました(写真下右)。

 酸性の溶液として、クエン酸溶液(100mM)と食酢(原液)を、アルカリ性の溶液として重曹溶液(100mM)とアンモニア水(原液)をナスの皮の抽出液に1対1の割合で加えました。

 水道水に対して、酸性のクエン酸と食酢は紫色が薄くなり赤が強くなった印象です。アルカリ性の重曹とアンモニア水は、水道水に比べ重曹が紫色が濃くなりアンモニア水が黄色の成分が入っている印象でした(写真上の上)。
 これらをトレーに移し(写真上の下)、「ImageJを用いた呈色反応モデルの画像解析法」で示した解析法を行いグラフ(吸収光の成分)にしました(写真下 左)。

 赤のチャンネル(R-ch)を1として緑のチャンネル(B-ch)と青のチャンネル(B-ch)の比率を水道水と比べてみました。クエン酸と食酢はほぼ同じ値を示し、緑のチャンネルと青のチャンネルの吸収光が高い値を示していました。重曹は、緑のチャンネルの吸収光が少し低めで、アンモニア水は、青のチャンネルの吸収光が高い値を示しました。
 また、強酸である塩酸が主成分のサンポールを溶液の緑色が気にならない約20倍に希釈し、ナスの皮の抽出液と反応させました(写真上 右)。赤みが食酢より増しているのが観察されました。

4. ナスニンの褐色成分について
 ナスの皮から水溶性の色素(ナスニン)を抽出して酸性、アルカリ性による色の変化を調べてみました。抽出液は、ナスの紫色に褐色が含まれたものになりました。ナスの抽出液には、ナスニンの他に水溶性のクロロゲン酸(ポリフェノール)が含まれるようです(ナス果菜外果皮からのナスニンを含む天然色素素材の調製)。
 また、ナスニンが酸化され重合することで褐色化するという報告もあります(色に関する食品苦情事例の再現_詳細)。
 精製など設備がないと綺麗な色の変化するナスニン抽出液を得ることは難しそうです。個人研究のレベルでは、これ以上の結果を望めそうもないので、他の方法を検討することにしました。

 紫キャベツとぶどうの巨峰の皮を使った検討を「紫キャベツと巨峰を使った酸性とアルカリ性による色の変化について」に掲載しました。
 また、お菓子作りに使われる紫芋パウダーを購入して実験した結果を「紫芋パウダーを使って酸性・アルカリ性の色変化を調べる」に掲載しました。