うがい薬でデンプンの定量測定について〜自宅でできる簡単な研究(FR-2.3)

2024-10-17

 ヨウ素デンプン反応は、褐色のヨウ素液にデンプンを反応させると青紫になる反応で、小中学生の時に習った記憶があると思います。この反応をデジカメで撮り、その画像を数値化すればデンプンの定量測定が出来ると考え実験しました。ここでは、ヨウ素液に市販のうがい薬(有効成分:ポピドンヨード)を、試料として片栗粉の馬鈴薯デンプンを使って実験をしました。
 試料の呈色反応によるデジタル画像を数値化する方法は、「ImageJを用いた呈色反応モデルの画像解析法」でほぼ確立しています。

考え方と目次

 何かの役には立たないし、人から見たらどうでも良いことで自己満足の世界でありますが、「デンプンやタンパク質を測定する実験の構想」で述べた考えをもとに個人研究として取り組んでいます。

目次
 1. 片栗粉の種類:馬鈴薯デンプンと馬鈴薯加工デンプン
 2. ヨウ素デンプン反応
 3. 細かな塊で観察されても検量線が得られるか
 4. ホピドンヨードの濃度について
 5. 白玉粉とコーンスターチ
 6 加熱処理しない片栗粉

1. 片栗粉の種類:馬鈴薯デンプンと馬鈴薯加工デンプン
 市販の片栗粉は、馬鈴薯(じゃがいも)由来の「天然デンプン粉」(下の写真左)と「加工デンプン粉」(下の写真右)が購入できました。

 加工デンプンとは、ジャガイモなどの天然デンプンに、酵素的や物理的、化学的などの加工をして作られた物質の総称です。食感や物性改良などを目的として使用される食品添加物で、日本国内では現在のところ12種類の加工でん粉が使用できるそうです(加工でん粉の食品における役割)。

2. ヨウ素デンプン反応
 天然と加工の片栗粉を加熱して溶かし、1mg/mLから2倍の希釈系列を作り、有効成分がホピドンヨードのうがい薬を100倍に薄めて反応させました(濃度は全て最終濃度です)。
 天然と加工デンプンともに濃い濃度で青紫色を示し、希釈するにつれ青紫色が少なくなり褐色が目立つ結果となりました。また、両者に違いはほとんど見られませんでした(下の写真 (A))。
 天然と加工デンプンの R, G, B チャンネルの吸収光の値(縦軸)をグラフにしたのが下の写真の (B) と (C) です。R-チャンネルは、でんぷんの濃度(横軸、logスケール)に比例して吸光度の数値が上がりました。また、100倍のホピドンヨード液は B-チャンネルと G-チャンネルの吸収により褐色を示しています。色の見え方については、「2種類の食紅水溶液を混ぜた時の色を予測してみました」で説明しています。

以上の結果より、
・天然、加工に違いが見られませんでした。
・ヨウ素デンプン反応による青紫色は、均一な溶液状態ではなく細かな塊として観察されました。
・G-チャンネルとB-チャンネルの吸収がバックグラウンドで見られました。

3. 細かな塊で観察されても検量線が得られるか
 ヨウ素デンプン反応による青紫色は、均一な溶液状態では無く細かな塊として観察されました。そこで、検量線を作るのにこの状態で解析した結果を使っても問題ないかを調べてみました。
 各ウェルの R-, G-, B-チャンネルの吸収光の値は、X軸におけるウェルの中心から設定した範囲(ウェルの直径の約1/3の数値(Y)の平均を求めています。詳しくは、「生成AIで作ったPythonプログラムで、数値化した画像の解析を自動化」で述べております。
 下の写真の(A)から(D)は、(E)の図の赤色で示した片栗粉の濃度 (0, 78.1. 625. 5.000 ug/mL) におけるウェルの中心から設定した範囲(四角い点線)をX軸に、 R-, G-, B-チャンネルの吸収光の値をY軸して示したグラフです。
 ヨウ素でんぷん反応による青紫色の塊が目立つ(B)と(C)では、吸収光の値にばらつきが見られました。それぞれの数値の平均値を求め、「2種類の食紅水溶液を混ぜた時の色を予測してみました」で述べた方法で平均化した色を表したのが下の写真の(F)で、R-チャンネルをグラフにして検量線を求めたのが(G)です。片栗粉の濃度が 1mg/mL から 0.1mg/mL の範囲で直線が得られました。

4. ホピドンヨードの濃度について
 ホピドンヨード液を100倍に薄めて実験すると、片栗粉無しの溶液の色(バックグラウンド)が薄い茶褐色でグラフにするとG-チャンネルとB-チャンネルの吸収の値が高くなっていました。
 その問題を解決するため、ホピドンヨード液の濃度について調べてみました。下の写真は、片栗粉の濃度を上の行から 500ug/mL、125ug/mL、片栗粉無し、にして右の列から左の列へポピドンヨード液を50倍から2倍の希釈系列で6,400倍までの濃度で反応させました。ポピドンヨード液が400倍から片栗粉無しで透明に近くなりました。

 下の写真は、ポピドンヨード液を400倍と800倍で片栗粉溶液の2倍希釈系列に反応させたものです。ポピドンヨード液を400倍で実験するのが良さそうだという結果でした。

 下の写真は、ポピドンヨード液が400倍での「3. 細かな塊と観察されても検量線が得られるか」のところでで実施した解析をしてみました。結果は、100倍の時と同様にR-チャンネルで直線の検量線が得られました。

5. 白玉粉とコーンスターチ
 片栗粉の主成分であるデンプンは、アミロースとアミロペクチンに分けられます(ご飯とお餅~アミロースとアミロペクチン~。ヨウ素デンプン反応では、アミロースは濃青色、アミロペクチンは赤紫色を示します。
白玉粉は、アミロペクチンが100%の割合で含まれるもち米から作られています(アミロースは含まれません)。
 下の写真は、白玉粉を加熱して溶かした溶液の2倍希釈系列に100倍と400倍のポピドンヨード液を反応させた結果です。

 ヨウ素デンプン反応で、赤紫色を示し片栗粉に比べ濃度が濃くないと呈色しませんでした。
R, G, B チャンネルの吸収光の値(縦軸)をグラフにしました。また、ポピドンヨード液100倍の結果について、R-チャンネルをグラフにして検量線を求めました。
 次に、とうもろこし由来のデンプン粉であるコーンスターチについてヨウ素デンプン反応の実験をしたのが下の写真です。

 じゃがいも由来の片栗粉とほぼ同じ結果となりました。

6. 加熱処理しない片栗粉
 加熱して溶かした片栗粉は、ヨウ素デンプン反応で凝集した形で呈色している結果となりました。加熱して溶かさなくても良いかどうか調べて見たのが下の写真です。
 水溶き片栗粉を2倍希釈系列を作り、ポピドンヨード液を反応させました。

 結果としてヨウ素デンプン反応の呈色は、眼に見える粒子に認められました。低濃度のデンプンを効率よく検出するには、一度デンプン粉を加熱して溶かしてから実験する方が良いという結論に至りました。